- NATIONS CUP
- 欧州/中東/アフリカ リージョナルファイナル、素晴らしいレースと衝撃の結末
- 2020シリーズ ネイションズカップ - リージョナルファイナル(欧州/中東/アフリカ)
- 2020.11.23
今年はパンデミックがもたらす困難に直面しながらも、世界中のスポーツイベントが無観客で再開されました。今月開幕した「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ リージョナルファイナル」もそのひとつ。過去のワールドツアーイベントと異なり、本イベントはオンラインでの開催となりましたが、過去のFIA GT選手権さながらの激戦となりました。
2020シリーズのネイションズカップは選手権フォーマットが更新され、南北アメリカ、アジア/オセアニア、欧州/中東/アフリカの3つのリージョンに分けられ、各リージョンの上位12名と、エキストラステージを勝ち抜いた4名、合計16名の選手がリージョン別の「リージョナルファイナル」へ出場します。欧州/中東/アフリカリージョンでは3つのレースを行い、上位8名*が「ワールドファイナル」に進出します。
*南北アメリカは上位4名、アジア/オセアニアは上位3名
各レースのスタートグリッドを予選タイムトライアルで決定し、各レースの上位10位までにポイントが付与されます。
レース1
2020シリーズ ネイションズカップ リージョナルファイナルの第1戦の舞台は、高速サーキットのレイク・マジョーレ・サーキット。選手たちはGr.3のレースカーを操り、7周のレースを行います。本レースはタイヤ交換義務はなく、全車ハードタイヤでのスタートです。予選ではHonda NSXを駆るイタリアのヴァレリオ・ガロ選手(Williams_BRacer)がポールポジションを獲得し、フランスのバティスト・ボボア選手(PRiMA_TsuTsu)がマクラーレン 650Sで2番手スタート。スペインのホセ・セラーノ選手(PR1_JOSETE)アウディ R8 LMSが3番手に、そしてオランダのリック・ケベルハム選手(HRG_RK23)がルノー・スポール R.S.01でトップ4に入ります。上位15名のドライバーが互いに1秒差以内となる拮抗した予選結果となりました。
決勝レース1はローリングスタートで、選手たちはクリーンなスタートを切ると、縦一列で第1コーナーへ向かいます。タイヤが温まるのを待つため、まだ大きな動きは見られません。そして1周目の終わり、ミシュランタイヤの準備ができていることを感じたコケ・ロペス選手(スペイン)は、この日最初の大きな一手を打ちます。ケベルハム選手(オランダ)のプジョー RCZに対しアウトサイドからオーバーテイクを仕掛けますが、ケベルハム選手は見事にポジションを守ります。しかし、2周目の第1コーナーでケベルハム選手をパスして4位へ浮上。この展開でケベルハム選手はプレッシャーを受けたようで、ペースを落としてしまいます。
4~6番手同士のバトルが繰り広げられる中、ガロ選手、ボボア選手、セラーノ選手の上位3台が徐々に後続集団を引き離していきます。レース中盤でのポジションはガロ選手、ボボア選手、セラーノ選手、ロペス選手、ケベルハム選手の順。5周目にはマンガーノ選手のポルシェ 911 RSRがケベルハム選手のルノーをパスして5位へ浮上。そして、フィンランド代表マーカス・コノネン選手(maatu79)、ハンガリー代表アダム・タペイ選手(TRL_ADAM18)、スウェーデン代表クリスチャン・マルキ選手(PR1_FIRE)、チェコ代表ニキータ・モイゾフ選手(ERM_Nick)による中団グループでバトル勃発。
6周目にはフォードGTを駆るモイゾフ選手がタペイ選手(ハンガリー)のシトロエンGTに接近しますが、タペイ選手は見事なドライビングで追撃をかわし、ポジションをキープ。結果、ガロ選手とボボア選手は圧倒的なリードを築いてワンツーフィニッシュ、スペインのセラーノ選手とロペス選手は3位と4位を獲得します。
Rank | Driver | Time |
---|---|---|
1 | ヴァレリオ・ガロ Williams_BRacer | 13:44:352 |
2 | バティスト・ボボア PRiMA_TsuTsu | +01.342 |
3 | ホセ・セラーノ PR1_JOSETE | +04.808 |
4 | コケ・ロペス Williams_Coque14 | +05.795 |
5 | ジョルジョ・マンガーノ Williams_Gio | +06.261 |
6 | リック・ケベルハム HRG_RK23 | +08.465 |
7 | マーカス・コノネン maatu79 | +08.924 |
8 | アダム・タペイ TRL_ADAM18 | +10.296 |
9 | ニキータ・モイゾフ ERM_Nick | +10.673 |
10 | クリスチャン・マルキ PR1_Fire | +12.037 |
11 | アダム・サスウィロー Williams_Adam41 | +12.733 |
12 | マニュエル・ロドリゲス TRL_MANURODRY | +15.914 |
13 | パトリック・ブラザン Williams_Fuvaros | +16.303 |
14 | サルバトーレ・マラグリーノ PR1_PIRATA666 | +16.315 |
15 | カルロス・サラザール pcm_stj | +19.228 |
16 | マーシン・シュビデレック SRC_SVDR | +19.787 |
レース2
これまでのレースフォーマットとは異なり、グリッド順は前回のレース順位ではなく、10分間の予選タイムトライアルで決まります。レース1の成績が振るわなかった選手でも、レース2のグリッドトップを獲得するチャンス。しかし、プジョー908を駆るヴァレリオ・ガロ選手(イタリア)が2度目のポールポジションを獲得し、その後ろにはスペイン代表ホセ・セラーノ選手、フランス代表バティスト・ボボア選手が続きます。
ミシュランのハードタイヤを装着した全車が一列になってスタートラインへ近づきグリーンフラッグ後、すぐセラーノ選手のアウディ R18 ハイブリッドがガロ選手のプジョーを抜いてトップに立ちます。時速310kmに達するバックストレートでジャガー XJR-9を駆るスペイン代表コケ・ロペス選手は、ニキータ・モイゾフ選手(チェコ)とマーシン・シュビデレック選手(ポーランド)をかわして2つポジションを上げて5位に。
2周目に入ってすぐ、ガロ選手が存在感を見せるつけるかのようにセラーノ選手からトップの座を奪い返します。3周目、イタリア代表サルバトーレ・マラグリーノ選手が猛プッシュで11位からシュビデレック選手のマクラーレンVGTをパスしながら6位まで順位を上げますが、クルヴァ・グランデでシュビデレック選手が6位を取り戻します。
4周目、トップのボボア選手がセラーノ選手を抜いて2位に浮上するも、その間もトップのガロ選手はプジョーのレースマシンで集中して走行、2.0秒以上に差が広がります。一方のセラーノ選手は、アウディ ハイブリッドのグリップに問題があったのか、ハンガリーのタペイ選手に抜かれてさらに順位を落としてしてしまいます。4ローターの91' マツダ 787Bが、20年以上離れた12' アウディ R18 ハイブリッドを追い抜く光景、これはグランツーリスモの世界ならではでしょう。
レース中盤、ガロ選手、ボボア選手、タぺイ選手そしてセラーノ選手をパスしたばかりのロペス選手の順で走行、その後ろには日産 R92のジョルジオ・マンガーノ選手、プジョー L750R ハイブリッドのサルバトーレ・マラグリーノ選手(PR1_PIRATA666)のイタリア人コンビが続きます。
7、8周目には大きなドラマは見られず、どのドライバーも快調にレースを進めていました。しかし、シュビデレック選手だけはリズムに乗れず、5位スタートから11番手までポジションを落としてしまいます。最好調だったのはガロ選手。2位のボボア選手と3.5秒以上にリードを広げます。一方、セラーノ選手は4位につけてはいたものの、アウディのストレートスピードの伸び悩みにより、ロペス選手のジャガーをパスすることはできませんでした。
この日2度目のポール・トゥ・ウィンを決めたガロ選手は、本レースで12ポイントを獲得し、合計24ポイントでグランドファイナルへ進みます。ボボア選手も健闘を見せ、続いてタペイ選手、ロペス選手、セラーノ選手がトップ5でレースを終えた。
Rank | Driver | Time |
---|---|---|
1 | ヴァレリオ・ガロ Williams_BRacer | 14:08.687 |
2 | バティスト・ボボア PRiMA_TsuTsu | +04.026 |
3 | アダム・タペイ TRL_ADAM18 | +05.995 |
4 | コケ・ロペス Williams_Coque14 | +07.775 |
5 | ホセ・セラーノ PR1_JOSETE | +08.107 |
6 | ジョルジョ・マンガーノ Williams_Gio | +10.522 |
7 | サルバトーレ・マラグリーノ PR1_PIRATA666 | +10.540 |
8 | ニキータ・モイゾフ ERM_Nick | +11.785 |
9 | パトリック・ブラザン Williams_Fuvaros | +13.209 |
10 | アダム・サスウィロー Williams_Adam41 | +14.808 |
11 | マーシン・シュビデレック SRC_SVDR | +15.166 |
12 | マニュエル・ロドリゲス TRL_MANURODRY | +18.179 |
13 | リック・ケベルハム HRG_RK23 | +18.757 |
14 | マーカス・コノネン maatu79 | +19.187 |
15 | カルロス・サラザール pcm_stj | +20.373 |
16 | クリスチャン・マルキ PR1_Fire | +21.718 |
グランドファイナル
伝統のスパ・フランコルシャンによる20周のグランドファイナル、選手たちは超高速のグランツーリスモ レッドブル X2019 Competitionへバーチャルに乗り込み、ソフト、ミディアム、ハード、3つのタイヤを1周以上使用することを義務づけられます。また、グランドファイナルではダブルポイントが加算されるため、ポイントリーダーのヴァレリオ・ガロ選手(イタリア)とバティスト・ボボア選手(フランス)に何か起これば、誰が優勝してもおかしくないリージョナルファイナルとなりました。
レースが始まる前から波乱を予感させる展開で、ガロ選手は予選で良い結果を出せず10番手からのスタートに。ポールポジションはボボア選手が獲得し一気に優勝へと近づきます。2番手にはスペインのホセ・セラーノ選手、3番手には第1、第2レースで苦戦したイギリスのアダム・サスウィロー選手がつきました。
セラーノ選手、4番手リック・ケベルハム選手(オランダ)と5番手コケ・ロペス選手(スペイン)はソフトタイヤでグリッドにつき、遅いミディアムタイヤを履いたボボア選手とサスウィロー選手から序盤でのリード獲得をねらいます。
レースが始まると、すぐにセラーノ選手が第3コーナー・ラディオンでボボア選手をパスし、ロペス選手がケベルハム選手の4位、そしてサスウィロー選手を抜き3位までポジションアップ。1周目を終えたところで、ハードタイヤを履いたガロ選手を含むドライバーたちがピットイン。ガロ選手がピットアウト時には前車との差は11秒、目前がクリアなコース上を走行できることになります。一方、ロペス選手はボボア選手を静かにかわして2位へ浮上。そしてボボア選手はレ・コーム(第9コーナー)立ち上がりでレッドブル X2019のコントロールを失うと、壁に接触して7位へ後退。後ろを走行する8位のガロ選手の目前に信じられない光景が映ります。 しかし、ガロ選手には1.0秒のペナルティが課せられ、今度は優勝を争うボボア選手にアドバンテージがつきます。
6周目、315km/hのケメル・ストレートでセラーノ選手をパスしたロペス選手がトップに立ち、ピットイン。ロペス選手は再びソフトタイヤに履き替え、トップは同郷スペイン代表セラーノ選手へ戻ります。フライングダッチマンのケベルハム選手はソフトタイヤを履いて猛追し、セラーノ選手をパスして2位までポジションを上げレースリーダーのロペス選手の後ろにつきます。セラーノ選手はさらにイタリア代表ジョルジョ・マンガーノ選手にも抜かれ、マンガーノ選手は7番手スタートから3位まで浮上します。
レース中盤の順位はロペス選手、ケベルハム選手、マンガーノ選手、セラーノ選手の順で、ガロ選手が7位、ボボア選手が11位という展開。そして12周目にはロペス選手が5.0秒までリードを広げます。ロペス選手がレースに勝利し、ガロ選手が7位でフィニッシュすればロペス選手が優勝を手にすることになりますが、ロペス選手はまだミディアムとハードタイヤのスティントを残しています。燃料給油とタイヤ交換のためにピットインしたロペス選手は、再びソフトタイヤを選択。4ストップの戦略が明らかになります。他のドライバーは3ストップを採用していたため、この独自のストラテジーは賢明ではないかのように見えます。
14周目にはハンガリーのパトリック・ブラザン選手がセラーノ選手をパスして4位まで浮上し、ロペス選手は残り2回のピットストップに備えるべく14秒のリードタイムを稼ぎます。そしてピットインを試みる18周目には、19秒もの差をつけていました。これは単純計算で、たとえ2回のピットストップを終えた後でもトップの座を守りきれることになります。一方それを許さないボボア選手は8位までポジションを上げていました。
ロペス選手はピットストップでミディアムタイヤにチェンジし、続く最後のピットストップでハードタイヤに履き替えると、ケベルハム選手と3位のブラザン選手の前で最終ラップを迎えます。ブラザン選手はケベルハム選手をパスして2位まで浮上しますが、結果は明らかでした。コケ・ロペス選手は大胆なピットストップ戦略でレースに勝利するだけでなく、ガロ選手から優勝を奪い取るというとんでもないことをやってのけたのです。トータル38ポイントを獲得したロペス選手は、7位でフィニッシュしたガロ選手に8ポイント差をつけてレースを終えました。
Rank | Driver | Time |
---|---|---|
1 | コケ・ロペス Williams_Coque14 | 39:16.154 |
2 | パトリック・ブラザン Williams_Fuvaros | +02.489 |
3 | ホセ・セラーノ PR1_JOSETE | +04.461 |
4 | リック・ケベルハム HRG_RK23 | +04.866 |
5 | アダム・タペイ TRL_ADAM18 | +10.759 |
6 | サルバトーレ・マラグリーノ PR1_PIRATA666 | +14.343 |
7 | バティスト・ボボア PRiMA_TsuTsu | +14.956 |
8 | ジョルジョ・マンガーノ Williams_Gio | +16.997 |
9 | マニュエル・ロドリゲス TRL_MANURODRY | +17.057 |
10 | アダム・サスウィロー Williams_Adam41 | +18.205 |
11 | ニキータ・モイゾフ ERM_Nick | +20.497 |
12 | マーカス・コノネン maatu79 | +23.396 |
13 | ヴァレリオ・ガロ Williams_BRacer | +23.492 |
14 | クリスチャン・マルキ PR1_Fire | +26.160 |
15 | マーシン・シュビデレック SRC_SVDR | +31.157 |
16 | カルロス・サラザール pcm_stj | +31.684 |
欧州/中東/アフリカリージョンの新チャンピオン、コケ・ロペス選手のコメント:「素晴らしい気分です。レースに勝たなければならなかったし、ラッキーなことにヴァレリオ(ガロ)が表彰台を逃しました。彼には同情しますが、勝てて良かったです。ピットストップ戦略については、トップを走っていてピットストップに必要な時間以上の差をつけられたときに、3ストップから4ストップに変更してソフトタイヤでの走行を増やすことにしました。」
2020シリーズ ネイションズカップ
リージョナルファイナル(欧州/中東/アフリカ)
ポイントランキング
Rank | Driver | Race 1 | Race 2 | Grand Final | Total Points |
---|---|---|---|---|---|
1 | コケ・ロペス Williams_Coque14 | 7 | 7 | 24 | 38 |
2 | ホセ・セラーノ PR1_JOSETE | 8 | 6 | 16 | 30 |
3 | バティスト・ボボア PRiMA_TsuTsu | 10 | 10 | 8 | 28 |
4 | ヴァレリオ・ガロ Williams_BRacer | 12 | 12 | 0 | 24 |
5 | アダム・タペイ TRL_ADAM18 | 3 | 8 | 12 | 23 |
6 | パトリック・ブラザン Williams_Fuvaros | 0 | 2 | 20 | 22 |
7 | リック・ケベルハム HRG_RK23 | 5 | 0 | 14 | 19 |
8 | ジョルジョ・マンガーノ Williams_Gio | 6 | 5 | 6 | 17 |
9 | サルバトーレ・マラグリーノ PR1_PIRATA666 | 0 | 4 | 10 | 14 |
10 | ニキータ・モイゾフ ERM_Nick | 2 | 3 | 0 | 5 |
11 | マーカス・コノネン maatu79 | 4 | 0 | 0 | 4 |
11 | マニュエル・ロドリゲス TRL_MANURODRY | 0 | 0 | 4 | 4 |
13 | アダム・サスウィロー Williams_Adam41 | 0 | 1 | 2 | 3 |
14 | クリスチャン・マルキ PR1_Fire | 1 | 0 | 0 | 1 |
15 | カルロス・サラザール pcm_stj | 0 | 0 | 0 | 0 |
15 | マーシン・シュビデレック SRC_SVDR | 0 | 0 | 0 | 0 |