「ジョワード」の愛称で呼ばれるホセ・ゲラルド・ポリコピオは、2015年、初めて開かれたGTアカデミー アジア大会でチャンピオンとなりました。グーグルでアカウント復旧のために働いていたこの若者は、アジア各国から何十万人もが参加したオンライン予選を勝ち抜いて、イギリス・シルバーストンでのレースキャンプに集まった強豪28人の頂点に立ったのです。
彼のモータースポーツにかける情熱と、プロのレーシングドライバーになろうとする決意は父親譲りです。ジョワードの父は1990年代に、日産フィリピンのクルマでレースをしていたのです。ジョワードは父親の勝負を観て育ち、自分もその歩みを継ぎたいと思い続けてきました。ところがジョワードにはアマチュアとしてレースを戦うだけの資金がありません。彼は自分の夢が決して実現しないのではないかと恐れていました。そこへ友達から、GTアカデミーがフィリピンでも開催されることを知らされたのです。
ジョワードはこの機会を最大限生かしたいと考えましたが、フィリピンでのプレイステーションネットワークのサービスの事情からオンライン予選に参加することができません。そこで彼はマニラじゅうのショッピングモールを調べて、GTアカデミーのライブイベントを探し当てました。それまで『グランツーリスモ6』の経験がまったくなかったにも関わらず、ジョワードは短期間のうちに国別決勝に進むためのテクニックを身に付けます。その国別決勝でも、これまでのレース経験とトレーニングが功を奏して、彼は大きな飛躍を見せました。その結果ジョワードはレースキャンプに参加する6名のフィリピン代表の一人に選ばれるという、これ以上ない喜びを手に入れたのです。
シルバーストンでのレースキャンプ。ジョワードは深い感銘を受けた5日間の後、日産370Z NISMOを使ってシルバーストン・インターナショナル・サーキットで行われるファイナルレースへとたどり着きました。決勝は3番グリッドでしたが、見事なスタートダッシュを決めてすぐさま2位にポジションアップ。その後ジョワードはしばらく様子をうかがっていましたが、全10ラップ中5ラップ目に巡ってきたチャンスでトップに立ちます。ときおり見ごたえのあるバトルを演じながらジョワードは残りラップを守りきり、チェッカーフラッグを受けました。こうしてジョワードことホセ・ゲラルド・ポリコピオは、2015年GTアカデミー アジア大会のチャンピオンに輝いたのです。
休む間もなく、ジョワードはドライバー開発プログラムに取り組み始めました。ところがしばらく後、彼の身体に厳しいトレーニングを避けた方がよいと思われるような問題が見つかったのです。FIA公認ドクターによる診断の後、ジョワードは説明を受け、一度フィリピンに戻るべきであることを理解しました。ジョワード自身の健康と幸福がなによりも優先するからです。彼が回復し、すべてがうまく進めば、日産フィリピンのサポートによって彼はすぐにでもサーキットへ戻ってくることでしょう。