ワールドシリーズ

グランツーリスモ ワールドシリーズ観戦ガイド

■数百万人の頂点へ

「グランツーリスモ」プレイヤーの頂点を決める世界大会「グランツーリスモ ワールドシリーズ(GTWS)」。だれが速いのか? そして、だれが強いのかーー? そんなシンプルな問いに答えを出すべく、選ばれし選手たちが海を越えて開催地へと集結します。

チャンピオンの称号が与えられるのは、全プレイヤー数百万人のうちのひとり。選手たちは、その厳しくも栄えある頂を目指し、火花を散らします。

■すべての人に、夢をつかむチャンスを

2018年に産声をあげ、今年で7年目を迎えるGTWSは、世界中のだれもが参加できるバーチャルなモータースポーツとして「グランツーリスモ」がスタートさせました。オンライン上で戦った名も知らない、言葉も違うプレイヤーたちが実際に出会い、ときにはライバルとして、そしてときには仲間として戦いながら、今もなお成長を続けています。

そんな彼らの基盤となるのは“モータースポーツ、そして「グランツーリスモ」が好き”ということ。

いちファン、いちユーザーとしてGTWSにエントリーした彼らは、その後の数えきれないほどのレース経験と努力によって、その才能を徐々に開花させ、今や世界のトップランカー、さらには一流のアスリートとしてスポットライトを浴びています。

例えば、初年度のチャンピオンを獲得し、それをきっかけにリアルモータースポーツ挑戦のチャンスをつかんだイゴール・フラガ(ブラジル)。国籍こそブラジルながらも堪能な日本語能力を生かし、2023年から日本のツーリングカーレース、SUPER GTにもフル参戦。eスポーツとリアルモータースポーツの二刀流として知られ、今シーズンは北米/中南米地区の代表選手として、マニュファクチャラーズカップを走ります。

例えば、2021年、2022年、2023年とポディウムの頂点に立ち、今年、国・地域で戦うネイションズカップ3連覇に王手をかけたスペインのエース、コケ・ロペス。小柄で陽気な性格ながら、いざレースとなると負けん気は人一倍強く、その粘り強い走りには定評があります。数多い選手のなかでも、速さ、安定感、勝負強さ、あらゆる面に長けたトッププレイヤーのひとり。今年は欧州/中東/アフリカ地区の代表選手として、マニュファクチャラーズカップに参戦。

例えば、2020年、開催されたふたつの選手権で王者に輝いた日本の宮園 拓真。4歳のころから「グランツーリスモ」をプレイしているという彼は、プロeスポーツプレイヤーとして活動するかたわら、日本の大手タイヤメーカーで現実のタイヤ開発にも従事。GTWS世界チャンピオンの座をふたたび手中にすることを目標に掲げ、アジア地区代表選手としてネイションズカップを走ります。

世界のトッププレイヤーたちが、さまざまな想いを胸に、夢をかけて戦うGTWS。

2024年シーズンの行方に、ご期待ください。

■ふたつのチャンピオンシップ

マニュファクチャラーズカップ

世界の自動車メーカーが、その威信をかけて戦う

GTWSでは、ふたつのチャンピオンシップが開催されます。ひとつは、世界の自動車メーカー(マニュファクチャラー)対抗戦の「マニュファクチャラーズカップ」。GTWSに参戦する全27マニュファクチャラーから、オフィシャルパートナーであるトヨタ、ジェネシス、マツダを含むオンライン予選の上位12マニュファクチャラーが参加し、その実力を競います。昨年まではチーム戦でしたが、今年は全3戦のワールドシリーズのみ、開催地域の各マニュファクチャラー代表選手ひとりが出場する個人戦へと変更。シーズンを締めくくるワールドファイナルでは、各開催地区からそれぞれ代表選手が集い、3人ひと組のチームとなって戦います。

ネイションズカップ

だれがいちばん速いのか。意地とプライドをかけた12人の戦い

もうひとつが「ネイションズカップ」。こちらは国・地域の代表選手たちが戦うレースです。ワールドシリーズには、オンライン予選の各開催地区、欧州/中東/アフリカ地区から5名、北米地区から2名、中南米地区から2名、アジア地区から2名、オセアニア地区から1名の計12名の選手が参加し、直接対決を行います。ワールドシリーズの開催地によって出場選手が入れ替わるマニュファクチャラーズカップとは異なり、全3戦のワールドシリーズとワールドファイナル、すべて同じメンバーで争われます。

■世界から選ばれし精鋭たち

GTWSに出場する世界から選ばれた選手たち。ハイレベルなオンライン予選を上位通過した彼らは、世界各地で開催されるライブイベントで直接対面し、角逐することとなります。学生はもちろんのこと、シムレーサー、デザイナー、企業に勤める一般会社員、そしてリアルモータースポーツにも参戦するプロレーシングドライバーなど、職業や年齢をふくめて、その素性はさまざま。GTWSでは、そんな彼らが『グランツーリスモ7』を通じて出会い、互いをリスペクトしながらも正面からぶつかり合います。選手たちが積み重ねてきた努力が花開く瞬間、チェッカーフラッグが振られるまでのストーリーをお楽しみください。

ワールドシリーズ 2024 ワールドファイナル - アムステルダム 出場選手一覧
https://www.gran-turismo.com/world/gt7/events/gtws2024/worldfinals/competitors/

■使用車両

GTWSで使用されるクルマは、大きく2種類。いずれも『グランツーリスモ7』独自の規則にのっとった車両になります。

Gr.3カー(グループ3カー)

市販車をベースにしたレーシングカーで、マニュファクチャラーズカップの決勝で使用されます。駆動形式はすべて後輪駆動のRWD車となり、パワーは500〜600馬力、車重1200kg〜1300kgと、ロードカーに比べて驚くほどパワフルかつ軽量に仕上げられています。また、巨大なリアウィングに代表されるように、さまざまなエアロパーツが装備されているのも特徴で、強力なダウンフォース(地面にクルマを押さえつける力)によって、ロードカーとは比較にならないほどの運動性能を誇ります。普段、街でみかけるあのクルマがレーシングカーになっていることも!? ぜひ、お気に入りの一台を探してみてください。

X2019 Competition

近未来的なフォルムを持つシングルシーターのレーシングカー、X2019 Competitionは、レッドブル・レーシングと「グランツーリスモ」のコラボレーションによるファンカープロジェクトから誕生したXシリーズの1台。ネイションズカップの決勝で使用される車両です。なかでもこのモデルは、より接近戦でドライバーの力量が出るよう、GTWSのためにモディファイされたもの。そのスペックは非常に高く、650kgほどの車体に800馬力オーバーののエンジンを搭載。RWD車ということもあり、生半可な腕前では手懐けられないモンスターマシンと言えるでしょう。

■開催コース

レースの舞台は大きくわけて2種類あります。ひとつはリアルサーキット。これは「鈴鹿サーキット」や「スパ・フランコルシャン」など、現実に存在するコースです。どこが登場するかはお楽しみ。モータースポーツファンなら、よく知るコースが出てくるかもしれません。

そしてもうひとつが、ロケーションやコースレイアウトを含めて独自にデザインした『グランツーリスモ7』オリジナルのサーキットです。リアルサーキットとの大きな違いは、コース幅。リアルサーキットよりも広く設計されており、よりバトルしやすいコースになっています。

■レースの見どころ・戦い方

レースは、ただ速いだけでは勝つことができません。ドライバー(選手)は、どのタイミングで、どういう方法でライバルを追い抜くかを考えながら運転しています。ここでは、そんなオーバーテイク(追い抜き)に焦点を当てて、レース中に行われる代表的なオーバーテイクを紹介します。

コース上でのオーバーテイク

スリップストリームを利用したオーバーテイク
コース上でのバトルこそレースの醍醐味。オーバーテイクの方法で最もポピュラーなのが、前走車の背後を走行することで自車が受ける空気抵抗を減らし、最高速度を上げてオーバーテイクにつなげるテクニックです。この手法は、地域によってスリップストリーム、トウ、ドラフティングなどと呼ばれます。長いストレートや全開区間でよく用いられるので、ぜひ注目してみましょう。

ブレーキング勝負からのオーバーテイク
ドライバーの技量が顕著に出る、高難度のオーバーテイク。コーナーへのアプローチでライバルカーよりもブレーキングポイントをわずかに後方にする(タイミングを遅らせる)ことで、コーナーへの進入でライバルカーよりも前に出る、というテクニックです。高速域からハードブレーキングを要するコーナーで有効で、成功すればレースが大いに盛り上がるいっぽう、わずかでもブレーキングのタイミングを誤ると自車が減速しきれなくなることから、ドライバーには度胸と高いブレーキング技術が求められます。

クロスラインを用いたコーナー出口でのオーバーテイク
走行ラインを工夫し、コーナーからの脱出速度を上げてオーバーテイクにつなげるテクニックです。コーナーの前半でクイックに自車の向きを変え、早いタイミングでスロットルを開けて加速状態に持ち込むことでコーナー出口での速度を稼ぎ、オーバーテイクに持ち込みます。コーナーの直後が長いストレートや全開区間の場合に有効で、自車とライバルカーの走行ラインが交差することから“クロスライン”とも呼ばれます。

ピット戦略によるオーバーテイク

長丁場のレースでとくに重要になってくるのが、このピット戦略による追い抜きです。ピットに入る理由は「タイヤ交換」「燃料補給」のふたつの目的があり、レース中、一度はいずれかの理由、もしくは両方を行うためにピットに入ることになります。とはいえ、 ひとたびピットインを行うと、ピットボックスに到着するまでの時間、作業時間、ピットアウトしてコースに復帰するまでの時間、これらを合計した数十秒のピットロスタイムが発生するため、闇雲にピットに入ることはできません。そこでドライバーは自分とライバルのレースペースとギャップを比較、考慮し、ときにはプッシュし、ときにはタイヤをいたわり、その場その場で適切な燃費とパワーのバランスをとりながら、ベストなタイミングでピットインを行うのです。GTWSでは、ドライバー自らがそのタイミングを決めることもリアルモータースポーツとの違いと言えるでしょう。

しかも、ピット戦略はドライバーによってさまざま。

レース序盤はていねいなドライビングでタイヤを温存してピットインを遅らせ、レース終盤、ソフト寄りのタイヤで一気に追い上げて会場を沸かせたり、逆にレース序盤からペースをあげて他車とのギャップを築き、余裕を持ってピットイン。終盤は追い上げてくるライバル勢を巧みなブロックで抑え切っての優勝など、過去、ピット戦略をトリガーとして盛り上がったレースは数多くあります。

レースでは、だれが、どのタイミングでピットに入るのか、にも注目してみましょう。

タイヤを制す者、レースを制す

GTWSで使用されるタイヤは、レーシングカーの場合で全5種。晴天用のドライタイヤが硬さ別にハード、ミディアム、ソフトの3種類、そして雨天用にインターミディエイト、ヘビーウェットの2種が用意されています。ドライタイヤは、ハードよりもミディアム、ミディアムよりもソフトのほうがグリップ力が上がり、1周のラップタイムは速くなるいっぽうで、摩耗による性能低下が大きくなります。

とはいえ、タイヤの摩耗速度は全員同じではありません。そこはクルマの特性やドライビングスタイルで、少しずつ差が出てきます。タイヤに余計なストレスをかけず、ていねいなドライビングをするドライバーほどタイヤの摩耗は穏やかになり、結果的にタイヤを長持ちさせることができます。とくにレース終盤は、そんな“タイヤの使い方”が結果に影響することも珍しくありません。とくに長丁場のレースでは、タイヤの性能を最も引き出したドライバーが勝つ、といっても過言ではないのです。

ドライタイヤ
ハード(H):タイムは出にくいが、長持ち
ミディアム(M):速さと摩耗のバランスが良い
ソフト(S):タイムは速いが、摩耗も早い

レース中は、雨が降ることもあります。その際、いつ雨天用のタイヤに履き替えるのかもドライバーの判断となり、ときにはレース展開を大きく左右することも。このとき、軽い雨のときは浅溝のインターミディエイト、しっかりと雨が降って路面が濡れたときはヘビーウェットを装着するのがセオリーとなります。なお、『グランツーリスモ7』のウェット路面は、現実同様に車両が多く通過するラインほど早く乾いていきます。ウェットレースでは、ウェットからドライへと移り変わるタイミングが大きな見どころになるでしょう。

ウェットタイヤ
インターミディエイト(IM):軽い雨のときに使用
ヘビーウェット(W):しっかりと雨が降ったときに使用

パワーをとるか、燃費をとるか

長いレースではタイヤマネージメントと同じくらい、あるいはそれ以上に重要になるのが燃費のコントロール、いわゆるフューエルマネージメントです。

『グランツーリスモ7』には「フューエルマップ」という機能が備わっており、走行中、エンジンに送られる燃料の濃度を6段階で調整することができます。パワーが欲しいときは「POWER(数字が1)」に、燃費を稼ぎたいときは「LEAN」方向へ調整し、燃料の消費ペースをコントロールします。

また、ドライビングにおいても、燃費を向上させるテクニックは実車同様。早めのシフトアップでエンジンの回転数を上げすぎないショートシフト、ときおりアクセルをゆるめるリフト・アンド・コースト、スリップストリームの要領で前走車を利用して空気抵抗を軽減させるなど、選手たちはさまざまなテクニックを駆使して燃費を向上させています。とくに全開区間が長く燃費が厳しいサーキットでは、パワーをとるか、燃費をとるかが戦略のわかれめ。ぜひ注目してみてください。

リアルレースよりも早く減る!? タイヤと燃料の消耗倍率

GTWSならではの要素に、タイヤと燃料の消耗倍率があります。これはレースごとに設定されるタイヤ摩耗と燃料消費の速度のことで、例えばそれぞれ「5倍」「2倍」に設定されているレースでは現実よりも5倍の速度でタイヤが摩耗し、2倍の速度で燃料を消費するという意味になります。

多くの場合、現実よりも早く消耗が進行する設定となるため、ドライバーたちは刻一刻と変化するタイヤのグリップ変化に対応し、同時にフューエルマップを操作しながら走行するという超人技をこなしているのです。

レース中のペナルティについて

GTWSでは、バーチャル空間におけるレースといえども、そこには明確なルールがあり、出場選手たちはお互いをリスペクトしあい、戦っています。そんなレースの公平性を保つために、ライブイベントでは審判を行うレーススチュワードが待機し、つねにレースを監視しています。

故意に相手をコース外に押し出したり、執拗な妨害などはスポーツマンシップに反する行為としてペナルティが科されるほか、激しいバトルの最中に接触等のインシデントが発生した場合も、リプレイ映像などをもとに審議をし、すみやかに対応を行います。ペナルティは主にタイムペナルティという形で提示され、コース上のペナルティ消化エリアで自動的にスローダウンさせることでペナルティを消化。ペナルティ対象車には車両上部にその旨を表示するほか、消化中は車両自体が半透明になり他車の走行を妨げないなど、バーチャル空間ならではの手順、演出で処理されます。人(レーススチュワード)とシステムによる、リアルモータースポーツにはない先進的なレース進行にも、ぜひご注目ください。

■実況解説つきでレースを楽しもう!

そんな白熱のGTWSの模様を、実況解説つきでお楽しみいただけます。大会当日は、マニュファクチャラーズカップとネイションズカップ、それぞれの決勝レースだけでなく、決勝グリッドを決める予選セッションもライブで放送予定。決勝レースとはまた違ったレギュレーションで行われるので、こちらもぜひお楽しみください。

大会当日のタイムスケジュールは、下記特設ページをご確認ください。ライブ放送はもちろんのこと、当日、都合がつかない方は、後日、アーカイブからでもご視聴いただけます。

世界から集うトップ選手たちによる真剣勝負を、この機会にぜひお楽しみください。

「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2024 ワールドファイナル - アムステルダム」特設サイト
https://www.gran-turismo.com/world/gt7/events/gtws2024/worldfinals