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MANUFACTURER SERIES
2021年シーズンを締めくくる圧巻のパフォーマンス。
ワールドファイナル マニュファクチャラーシリーズ レポート
2021 シリーズ マニュファクチャラーシリーズ - ワールドファイナル
2021.12.05

2021年12月4日と5日にかけて、FIAグランツーリスモチャンピオンシップのマニュファクチャラーシリーズとネイションズカップの最終戦が放送されました。マニュファクチャラーシリーズには、オンラインシリーズ シーズン2のトップ12マニュファクチャラーが集結。チームごとに、ヨーロッパ/中東/アフリカ地区、南北アメリカ地区、アジア/オセアニア地区からそれぞれ1名ずつ代表選手が参戦します。

2021年に獲得したワールドシリーズポイントはワールドファイナルに持ち越されます。首位で並ぶチームトヨタとチームマツダはともに13ポイントを持って本イベントをスタート。一方、ディフェンディングチャンピオンのチームスバルは4ポイントでスタートします。王座を守るためには、全力を尽くす必要があります。

各選手はいずれかの1レースに参加し、最大12ポイントを獲得するチャンスがあります。グランドファイナルではダブルポイントが有効になります。

レース1:レイク・マジョーレ・サーキット GP II

レース1の予選は波乱を予感させるものでした。選手権ポイントリーダーのチームマツダが10番手スタート、さらにはディフェンディングチャンピオンのチームスバルは7番手スタートに沈みます。一方、チームトヨタは、GRスープラレーシング コンセプトで安定のパフォーマンスを見せたスペインのコケ・ロペス選手(coquelopez14)がポールポジションを獲得します。2番手は、同じくスペインのホセ・セラーノ選手(PR1_JOSETE)のポルシェ、3番手はブラジルのニューフェイスであるジョアン・ペソア選手 (GRID_JoaoSof)が駆るホンダ NSX Gr.3、4番手はフォルクスワーゲン ビートル Gr.3を駆る奥本博志選手(HIROGRAND_1009)です。レイク・マジョーレ・サーキットを10週するレース1では、最低1回のピットストップが義務付けられ、ミディアムタイヤを交換、あるいは給油する戦略をとることも可能です。

レースがスタートすると、ロペス選手が右コーナーのターン1へ真っ先に飛び込み、他のマシンが1列のフォーメーションでそれに続きます。はじめの2周で順位変動は見られず、各車のギャップは最大でも1秒程度の均衡状態が続きます。しかし3周目、BMW M6 GT3の久万田崚選手(Ryo3GoGo)日産 GT-R GT3の佐藤彰太選手(anchovy_sand)が、4位で走行中の奥本選手に仕掛け始めたことでレースが動き始めます。この周の終わりには、数台がピットストップを行ってピット義務を消化し、次の周には首位を走るロペス選手に加え、奥本選手と久万田選手もピットに入ります。一方、ポルシェのセラーノ選手はステイアウトを選択します。ピットストップを遅らせることで前方のトラフィックがクリアな状態での走行時間を延ばし、できるだけリードを広げる作戦です。

セラーノ選手は4周目にピットインし、タイヤを交換。首位のロペス選手から1.8秒差後方でコースへと戻ります。意外なことに、ピットアウトしたセラーノ選手の後ろにいたのは日産 GT-Rの佐藤選手。セラーノ選手のわずか2秒後方、3番手で走行中です。すべてのチームがピットストップを終えた時点での走行順は、トヨタ(ロペス)、ポルシェ(セラーノ)、日産(佐藤)、フォルクスワーゲン(奥本)、BMW(久万田)そしてホンダ(ペソア)です。

7周目、ペソア選手のホンダ NSXが久万田選手のBMW M6をパスして4位を奪います。一方、トップ3台に順位変動はなく、1位はトヨタのロペス選手、1.5秒差で2位はポルシェ 911のセラーノ選手、2.7秒差で3位は日産GT-Rの佐藤選手です。

8周目、ホンダのペソア選手が最終コーナーで奥本選手のビートルのインサイドへ華麗に切り込み、4番手を奪います。一方、ポルシェのセラーノ選手は、トヨタのロペス選手との差を1秒以下にまで縮めています。セラーノ選手は、ピットストップのタイミングを遅らせたことで、よりフレッシュなタイヤを装着しており、最終ラップでトヨタを猛追します。セラーノ選手は最終コーナーでロペス選手を捉えますが、パスすることは叶わず、ロペス選手のスープラとわずか0.3秒差でフィニッシュしました。日産の佐藤選手は3位でフィニッシュし、印象的なパフォーマンスを見せました。レース1の勝利によって、チームトヨタは獲得ポイント数を25ポイントにまで伸ばし、2位・17ポイントで並ぶチームポルシェとチームマツダとの差をさらに広げます。

Rank Manufacturer / Drivers Time
1 トヨタ コケ・ロペス 19:38.980
2 ポルシェ ホセ・セラーノ +00.309
3 日産 佐藤 彰太 +04.438
4 ホンダ ジョアン・ペソア +06.676
5 フォルクスワーゲン 奥本 博志 +06.222
6 BMW 久万田 崚 +07.108
7 マツダ ミロスラフ・クラフチェンコ +07.735
8 アストンマーティン アダム・ウィルク +10.556
9 スバル トーマス・シビリア +11.877
10 ジャガー 井芹 颯真 +14.151
11 メルセデス・ベンツ 長 和樹 +18.267
12 ヒュンダイ ファビオ・メレンダ +18.530

レース2:東京エクスプレスウェイ・東ルート 外回り

レース2のグリッドは、前レースのフィニッシュ順で決まります。したがって、ポールスタートは、チームトヨタの山中智瑛選手(yamado_racing38)が駆るGRスープラ レーシングコンセプトです。2番手スタートは菅原達也選手(blackbeauty-79)が駆るポルシェ 911 RSR、3番手はカナダのイーサン・リム選手 (VQS_Ethan)の日産GT-R、そして4番手は杉森翔平選手(s-shohei_)のホンダ NSX Gr.3です。レースの舞台は、コース幅の狭い夜の東京エクスプレスウェイ。この10周のレースでは、ソフトとミディアムタイヤをそれぞれ最低1周使用することが義務付けられ、レース戦略がカギとなります。

山中選手はスタートにソフトタイヤを装着し、全チームで唯一となる作戦を実行します。その狙いは明白で、序盤で集団から抜け出し、首位を保ったままレースを終えることです。レース2では長いホームストレートでお互いがスリップストリームを使い合うことで数々のドラマが生まれました。スタートが切られ、リム選手の日産GT-Rが菅原選手の911のインサイドに飛び込み、2番手を奪います。東京エクスプレスウェイのこのセクションはスリップストリームを使いやすい場所であるため、ポジションの入れ替えが多く見られました。

次の周、杉森選手のNSXとリム選手のGT-Rが何度か順位を入れ替えるなか、不意にカナダのジェフ・ガラン選手(LLOYDZZELITE)が駆るマツダ RX-VISION GT3と、菅原選手のポルシェ RSRが後方から忍び寄り、ターン1でパスしてそれぞれ2位と3位へとポジションを上げます。その間に、山中選手は2位との差を2.2秒にまで広げています。チームトヨタのプランは功を奏しているようです。この周の終わりには、数台がピットインし、よりラップタイムの速いソフトタイヤへ交換します。一方、山中選手はコース走行を続け、さらにリードを築いていきます。

5周目には、チームジャガーでカナダのアンドリュー・ブルックス選手が(PX7-Deafsun)が存在感を見せはじめ、ポルシェの菅原選手とマツダのガラン選手をパスして2位へと浮上します。メルセデス・ベンツ AMG GT3を駆るブラジルのルーカス・ボネリ選手もハードチャージし、ポジションを11位から5位へと上げます。

山中選手がピットインしたのは7周目でした。後続に対し20秒差のリードを築いていましたが、ピットアウトしてコースに復帰した時には、その差はわずかに1.5秒にまで縮まります。残りは3周、果たしてラップタイムの遅いミシュランハードタイヤで首位を守り切ることはできるのでしょうか?9周目に入り、1位・山中選手と2位以下の後続グループとの差は1秒にまで縮まります。すぐ後方を走るのは、マツダ RX-VISION GT3(ガラン)、ジャガー F-Type(ブルックス)、メルセデス・ベンツ AMG GT3(ボネリ)そしてポルシェ 911 RSR(菅原)です。ラップタイムの速いソフトタイヤを履いて、山中選手のトップの座を虎視眈々と狙います。

最終ラップに入り、山中選手はドライビングスキルを発揮して、リード差を1.2秒にまで戻し、後続グループをスリップストリーム圏外へと突き放します。その結果、レースの焦点は2位争いへと移行します。レースは残り1周、ガラン選手のRX-VISIONはボネリ選手のAMGを懸命に抑えます。そしてこのレースで最もスリリングな瞬間が訪れます。最終コーナーを抜けたルーカス・ボネリ選手はチャージを仕掛け、ジェフ・ガラン選手をフィニッシュライン直前で抜き去ります。その差はわずか0.03秒。山中智瑛選手の勝利によって、チームトヨタは12ポイントのリードを持って、首位でグランドファイナルに臨みます。2位以降のチームマツダとチームポルシェにもまだチャンスは残されています。

Rank Manufacturer / Drivers Time
1 トヨタ 山中 智瑛 20:06.520
2 メルセデス・ベンツ ルーカス・ボネリ +01.430
3 マツダ ジェフ・ガラン +01.465
4 ジャガー アンドリュー・ブルックス +01.603
5 ポルシェ 菅原 達也 +01.835
6 ホンダ 杉森 翔平 +04.716
7 日産 イーサン・リム +08.764
8 BMW ディーン・ヘルト +08.841
9 アストンマーティン アロンソ・レガラード +09.034
10 ヒュンダイ ケビン・パウンダー +09.256
11 フォルクスワーゲン トーマス・ラブトレー +09.450
12 スバル ダニエル・ソリス +18.335

グランドファイナル:ニュルブルクリンク 24hレイアウト

マニュファクチャラーシリーズの最終レースは、世界で最も有名なテストトラックであるニュルブルクリンクです。今回使用されるのは「24h」レイアウトで、全長は25.4km、コーナー数は170にも及びます。5周のレースでは、ソフト、ミディアム、ハードのタイヤをそれぞれ1周以上使用することが義務付けられ、各チームには最適なピット戦略を実行することが要求されます。ポールポジションは、トヨタのエースドライバーで、2018年のネイションズカップ王者でもあるブラジルのイゴール・フラガ選手(IOF_RACING17)。2番手スタートにはメルセデス・ベンツ AMG GT3を駆るフランスのバティスト・ボボア選手(R8G_TSUTSU)、3番手はマツダ RX-VISION GT3 CONCEPTを駆る國分諒汰選手(Akagi_1942mi)、4番手はジャガー F-Type Gr.3でドライバーはハンガリーのアダム・タペイ選手(TFz_Adam18)です。

トップ4台は、スタートにラップタイヤの速いソフトタイヤを選択します。ミディアム/ハードタイヤに交換するまでの間に、できるだけ大きなリードを築く作戦です。

レースがスタートしてすぐ順位変動があり、マツダの國分選手が、メルセデス・ベンツのボボア選手の抜いて2位を奪います。一方、2020年ネイションズカップ王者・宮園拓真選手(Kerokkuma_ej20)がドライブするチームスバルのWRX Gr.3は、12位から8位へポジションアップ。ボボア選手は、1周目のアデナウフォレストで2番手を取り戻しますが、ドッティンガーで再び國分選手が奪い返します。その間に、フラガ選手は集中した走りを続け、1周目を終えるまでに後続グループに対し3.7秒差のリードを築きます。予想通り、ハードタイヤでスタートしたチームは1周目の終わりにピットイン。ほとんどはミディアムタイヤに交換し、よりラップタイムの速いミシュランタイヤ(ソフト)を最終スティントまで温存します。

メルセデス・ベンツ(ボボア)とマツダ(國分)のバトルは2周目に激化。フルークプラッツでは、相手をコース外へ押し出しかねないほどの接近戦を繰り広げます。國分選手がボボア選手から2位を奪って徐々に引き離しはじめ、リード差を5秒近くにまで広げる首位のフラガ選手を追いかけます。2周目の終わりに上位陣がピットに入り、ミディアムタイヤに交換して、レース後半戦への準備を整えます。

残り3周時点での走行順は変わらず、首位のトヨタ(フラガ)、2位・マツダ(國分)、3位・メルセデス・ベンツ(ボボア)、4位・ジャガー(タペイ)そして5位はフランスのケビン・ベリック選手(Kelicful)が駆るBMW M6 GT3です。いずれのチームもあと1回ピットストップを残しています。そして3周目の終わりに、中団グループがピットインしてソフトタイヤへと交換。上位グループへのチャージを開始します。

4周目に入り、BMW M6 GT3のベリック選手が、タペイ選手のジャガー F-Typeをパスして4位へとポジションを上げ、次の狙いを2秒前方にいるボボア選手のメルセデス・ベンツ AMGに定めます。それ以外に順位の変動はなく、首位のフラガ選手が後方との差を7秒以上に広げています。この周の終わりに、フラガ選手、國分選手、ボボア選手そしてタペイ選手がピットインします。フラガ選手は依然大きなリードを保ったままコースへと復帰します。一方、ピットアウト後の5位・ジャガーのタペイ選手とその後方でソフトタイヤを履くグループを率いる日産 GT-Rのメヒディ・ハフィディ選手(フランス/V1_Mehdi59)との差はわずか0.5秒ほどです。

ハフィディ選手がタペイ選手のF-Typeから5位のポジションを奪うのに時間はかかりませんでした。そして、レースの焦点は7位で走行しているポルシェのアンゲル・イノストローザ選手(チリ/YASHEAT_Loyrot)に移ります。ポルシェが今シーズンのマニュファクチャラーシリーズの表彰台入りを果たすためには、なんとしてでも7位以上でフィニッシュする必要があります。レース終盤にして、5位・ジャガー、6位・ポルシェと7位・フォルクスワーゲンによる三つ巴の戦いが勃発します。3台はヴェーアザイフェンで互いに接触しながら、3ワイドで駆けていきます。フォルクスワーゲンのスターンバーグ選手は、そこでコース外へと押し出されてしまい、10位へと転落。イノストローザ選手は、ケッセルヒェンでタペイ選手をかわして6位へと浮上しますが、イノストローザ選手にはスターンバーグ選手との接触による1秒のペナルティが下ります。このペナルティによって、タペイ選手がドッティンガーで6位を取り戻します。イノストローザ選手はそのまま7位でフィニッシュすることになりましたが、結果としてチームポルシェは2021年マニュファクチャラーシリーズで総合3位を獲得しました。

最終的には、素晴らしいパフォーマンスを見せたイゴール・フラガ選手がグランドファイナルで勝利して、チームトヨタにシリーズタイトルをもたらしました。國分諒汰選手の2位フィニッシュによって、チームマツダは浮き沈みのあった今シーズンを経て、総合2位を獲得。バティスト・ボボア選手が3位でレースを終えて、メルセデス・ベンツはポルシェと1点差となる総合4位になりました。

レース後、フラガ選手のコメント「今回はあまり上手くいかなかった2018年と同じ組み合わせのコースだったので、たくさん練習しました。挽回ではありませんが、今回は結果を残したいと思っていたので、それができてとても嬉しいです。ニュルブルクリンクで5周をハードにプッシュするのは大変なことですが、それができてよかったです」

レース1を勝利したコケ・ロペス選手のコメント「二人の素晴らしいチームメイトといいクルマのおかげで達成できました。3レースとも勝てて、とても嬉しいです」

レース2を勝利した山中智瑛選手のコメント「2回目のワールドチャンピオンを取ることができて、本当に嬉しいです。3人が完璧な仕事をできたからこその結果です」

Rank Manufacturer / Drivers Time
1 トヨタ イゴール・フラガ 41:15.216
2 マツダ 國分 諒汰 +08.390
3 メルセデス・ベンツ バティスト・ボボア +17.015
4 BMW ケビン・ベリック +18.423
5 日産 メヒディ・ハフィディ +19.641
6 ジャガー アダム・タペイ +23.481
7 ポルシェ アンゲル・イノストローザ +24.664
8 フォルクスワーゲン ロベルト・スターンバーグ +25.861
9 スバル 宮園 拓真 +26.016
10 ホンダ ヴァレリオ・ガロ +27.378
11 アストンマーティン ニキータ・モイゾフ +28.180
12 ヒュンダイ アンドリュー・リー +36.421

2021 マニュファクチャラーシリーズ - ワールドファイナル
リザルト

Rank Manufacturer / Drivers Race 1 Race 2 Grand Final Total Points
1 トヨタ イゴール・フラガ / 山中 智瑛 / コケ・ロペス 12 12 24 48
2 マツダ 國分 諒汰 / ジェフ・ガラン / ミロスラフ・クラフチェンコ 4 8 20 32
3 メルセデス・ベンツ バティスト・ボボア / ルーカス・ボネリ / 長 和樹 0 10 16 26
4 日産 メヒディ・ハフィディ / イーサン・リム / 佐藤 彰太 8 4 12 24
4 ポルシェ アンゲル・イノストローザ / 菅原 達也 / ホセ・セラーノ 10 6 8 24
6 BMW ケビン・ベリック / ディーン・ヘルト / 久万田 崚 5 3 14 22
7 ジャガー アダム・タペイ / アンドリュー・ブルックス / 井芹 颯真 1 7 10 18
8 ホンダ ヴァレリオ・ガロ / 杉森 翔平 / ジョアン・ペソア 7 5 2 14
9 フォルクスワーゲン ロベルト・スターンバーグ / トーマス・ラブトレー / 奥本 博志 6 0 6 12
10 スバル 宮園 拓真 / ダニエル・ソリス / トーマス・シビリア 2 0 4 6
11 アストンマーティン ニキータ・モイゾフ / アロンソ・レガラード / アダム・ウィルク 3 2 0 5
12 ヒュンダイ アンドリュー・リー / ケビン・パウンダー / ファビオ・メレンダ 0 1 0 1
FIA-GT選手権 2021 | ワールドファイナル | マニュファクチャラーシリーズ | 決勝
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