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特集

ニュル24時間レース2010 レースレポート(2/3)

5月15日午後2時。決勝スタートを目前に控えたホームストレートにはダミーグリッドが出来上がり、その回りをチーム関係者や報道陣が埋め尽くす。

「ワールド・カー・アワード」チームのIS Fは第1グループの33列目からスタート。スタートドライバーは山内が務める

王者の連覇を阻むマシンたち

今年の24時間レースの話題の一つは、「マンタイ・ポルシェの5連覇を阻むのは誰か」でした。その有力候補はなによりポルシェ自身です。今年ポルシェは最新兵器911GT3 Rを33台投入(SP9Gクラス)。耐久レースでは戦闘力が拮抗するため、どのマシンにも勝機があります。その中の1台はGT3 Rエボともいえる911GT3 Rハイブリッド(E1-XPクラス/ゼッケン9)。前両輪に仕込んだモーターをフライホイールジェネレーターという「回し車」で駆動するこのマシンは、勝つために生まれた「肉食系ハイブリッド」です。

もちろん予選を席巻したアウディR8LMS(SP9Gクラス)も強力な優勝候補。昨年、デビューするやこの24時間レースで2位と5位に食い込んだR8 LMSは、計76のレースで23勝を記録、抜群の勝負強さを誇ります。さらにはALMS(アメリカン・ル・マン・シリーズ)の強豪マシンM3 GT2を2台持ち込んだBMWやアストンマーチン、フェラーリF430といった伏兵もおり、トップ争いは熾烈を極めそうです。

このレース4連覇。もはや風格さえ漂わせるマンタイ・ポルシェ1号車。マンタイはこれ以外に4チームの911GT3 R(ハイブリッド含む)のマシン作りを手がけている

ピットを占拠するR8軍団。今年アウディはR8 LMSを7台投入した。5.2リッターV10直噴エンジンを積み500psオーバーのパワーを発生。ただしお家芸のクワトロ(4WD)はFIAの規程によりFRへと変更されている

テント内で整備中のM3 GT2。ALMS(アメリカン・ル・マン・シリーズ)での勝利を託してBMWが開発したマシン。4リッターV8は専用チューンにより500psを発生。ドライバーにもWTCCを戦うエース級を起用している

ヴァンテージで参戦してきたアストンは、今年1台だけ4ドアモデルのラピードを投入した。ドライバーには同社CEOを務めるウルリッヒ・ベッツ氏も名を連ねている

一方、日本勢からも目が離せません。レクサスは参戦3年目となるLFAを、日本人ドライバーチーム、ドイツ人ドライバーチームと2台投入(SP8クラス/ゼッケン50と51)し、それぞれ予選25位、28位につけました。もはやニュルに欠かせない存在となったファルケン・モータースポーツはおなじみのフェアレディZで参戦(SP7クラス/ゼッケン44/予選50位)。スバル・ワークスのインプレッサ(SP3Tクラス/ゼッケン137/予選91位)もワークス参戦3年目として上位入賞を目指します。

フェアレディZにおなじみのカラーリングを施して、11回目の参戦を果たしたファルケン・モータースポーツ。ドライバーはピーター・ダンブレック、ダーク・ショイスマンに加えて星野一樹、田中哲也両選手が参加

STIによるワークス体勢となって3年目。スバル・インプレッサも今年クラス優勝を目指す。ドライバーには清水和夫、吉田寿博、マルセル・エンゲルス、カルロ・ヴァンダムという4名

3年目の挑戦となるレクサスLFAは、日本人ドライバーチームとドイツ人ドライバーチームが担当する2台をエントリー。昨年同様クラス優勝を狙う
3年目の挑戦となるレクサスLFAは、日本人ドライバーチームとドイツ人ドライバーチームが担当する2台をエントリー。昨年同様クラス優勝を狙う

覇権の終わり

決勝当日、この日もサーキットは濃い霧の朝を迎えました。ところが各チームがグリッドにマシンを並べ始める正午過ぎ、1週間ぶりの太陽が顔を出し、奇跡のような青空が広がります。午後3時、結局レースは完全なドライコンディションの下でスタート。24時間の長い長い旅が始まりました。

「ワールド・カー・アワード」チームは予選の展開に気持ちを引き締めていました。スタートドライバーを務めたのは山内。198台がひしめく序盤の混乱から抜け出し、ペースを築く役割です。ドライバー1人あたりの周回数は燃費から計算された7ラップ。

グリッド33列目からスタートした山内は久しぶりのドライタイヤの感覚を掴むとペースを上げ、3ラップ目には10分5秒708という好タイムを記録します。無事既定の周回を消化しドライバー交代というとき、昨日見つかった燃料漏れが再び発生。チームにひやりとした空気が流れました。しかしメカニックの適切な措置で症状は完治。25分をロスしましたが、マシンは無事松田さんに委ねられてコースに復帰します。ただしコース上ではリタイアするマシンが続出、あちこちでイエローフラッグが振られており緊張したドライビングが続きます。

一方上位クラスの展開も平穏ではありませんでした 。スタートの混乱からライバルをごぼう抜きにしてトップに立ったのは王者マンタイ・ポルシェ。さらにはゼッケン8、ゼッケン12という2台の911GT3 RがR8の前に割り込みます。2時間後、ゼッケン8、12に代わって今度は911ハイブリッドがジャンプアップ、BMW M3 GT2(ゼッケン25)も加わってR8勢とバトルを繰り広げますが、首位マンタイはじわじわと差を広げていきます。

この展開から、半ば常態化したマンタイのレースが今年も始まったと思いました。ところがあたりが闇に包まれ始めた午後10時40分、アクシデントが発生します。16km地点で周回遅れのマシンがスピン、コースを横切った際にマンタイと衝突します。マンタイ・ポルシェはボディ前後を大破してレースを断念。4年に及んだ覇権がこの瞬間終わりました。

対する「ワールド・カー・アワード」チームは、序盤の燃料漏れにより178位まで落ちた順位をじわじわと挽回させていました。スタート3時間後には165位、5時間後には133位、7時間後の午後10時には120位までポジションを回復。IS Fが属するSP8クラス(排気量4500~6250cc)では全12台中6位という成績です。

途中の20時40分、2度目のスティントの山内から「ブレーキの踏み加減が変わる」という無線が飛び込みました。結局、エンジン負圧を利用したサーボがブレーキングに追いつかないということが判明。ドライビングスタイルを変えることで対処します。サーボはレーシングカーでは無用のデバイスですが、市販車ベースのIS Fならではのハプニングだといえるでしょう。

午後2時半過ぎ。車内でフォーメーションラップのスタートを待つ「ワールド・カー・アワード」チームの山内

5月15日午後3時。1周のフォーメーションラップを経て24時間レースがスタートした。第1コーナーへとなだれ込む第1グループのマシンたち

予選の怨念をはらすかのように、7番手スタートからライバルをごぼう抜きにしてトップに立ったマンタイ・ポルシェ。さらにじわじわと2番手以降を引き離しにかかる

レース序盤にはトラブルなどで立ち往生するマシンが続出。コースあちこちでイエローフラッグが振られる中IS Fは慎重にペースを上げて行く

レース期間中、イベント棟「リンク・ヴェルク」ではニュルブルクリンク版「グランツーリスモ」のスペシャルバージョンが大勢の来場者を集めていた